おじいちゃんの庭
子供の頃、コトリママに連れられてよく遊びにいっていたおじいちゃんとおばあちゃんの家。
けして大きな家ではないけれど、家と同じくらいの広さのお庭がありました。
植物が大好きなおじいちゃんは、遊びにいくといつだって庭にいました。
小さな池で、鯉やメダカを飼っていました。グミの樹やユスラの樹、柿の樹などもあって、季節ごとにおいしい果物をもらっていました。初夏になるとスズランの香りが庭を包み込んでいました。
子供だったコトリにとって、そこは森の中。「蚊に刺されるから、入りなさい!」と言われても、庭の中を探検していました。
そんなおじいちゃんとおばあちゃんの家と庭が、もうすぐなくなってしまいます。
もう手放すことにしたのです。
その話をはじめて聞いた時、「じゃあ、庭にある樹たちもなくなっちゃうの?」と聞きました。
そう、更地にして土地を返すそうです。
春を待つことはできませんでした。だから今日、緑のコトリさんと庭に遊びにいきました。
50年の月日の中で、いろんな家族がそこで暮らした頼もしい家。
それをずっと見守ってきてくれた庭と庭の植物たち。
もうすぐここがなくなってしまうこと、なにもできなくてごめんねということ、ありがとうということを伝えました。
子供の頃には気がつかなかった大きな桜の樹。見上げるともう桜の蕾がたくさんついていました。
関連記事