おむすびが心の扉をひらく時
「
おむすびを食べたことで自殺をとどまった人がいる」
こんなことをはじめて聞いた時、この
おむすびを作った
佐藤初女さんは
一体どんな特殊能力を持った人だろうかと思いました。
でも、その答えはとても普通のことでした。
誰かに大切に思われる気持ちが、その人の心に光をさしたのです。
初女さんは、突然訪れたその人が帰るとき、
電車の中でおなかがすくだろうと思って、
おむすびを持たせてあげただけだといいます。
「こうしたらこうなるだろう」とか「こうなってほしい」と思う気持ちはなく、
ただその人のことを想って、
おむすびを作ったのです。
その人は電車の中で、おむすびの包みをあけました。
すると、おむすびがふんわりとタオルで包まれています。
「こんなに自分のことを想っていてくれる人がいるのに、自分は死のうとしていたなんて・・・」
と思ったら、もう死んでしまおうという気持ちが消えていたそうです。
私はこの話を聞いて、なんだかわかるなと思いました。
私も食事がぜんぜん通らなくなってしまった日々があります。
おなかが空っぽになっても、心がいっぱいになってしまって、食事がノドを通らないのです。
そんな時、友だちが木々の色づく公園で、
お母さんが私のために作ったというおむすびをさしだしてきたのです。
「これは食べなきゃ悪いな」と思って、パクっと一口食べたのです。
すると不思議なことに、ノド元にあった石コロがころっと落ちるように、
おなかがすきはじめました。おむすびがとてもおいしいのです。
初女さんは、ものが食べられないということは、心の扉を閉じていることだといいます。
そこにすっと何かが入ってくることで、心が開きます。
「おいしい」と思った瞬間、表情とか全部が変わりはじめるそうです。
ひと口、ふた口と食べ進むうちに、心の扉も少しずつ開いていくのです。
魔法のおむすびの秘密は、ここにあったのです。
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