2005年12月20日

おむすびが心の扉をひらく時

おむすびを食べたことで自殺をとどまった人がいる」
こんなことをはじめて聞いた時、このおむすびを作った佐藤初女さん
一体どんな特殊能力を持った人だろうかと思いました。
でも、その答えはとても普通のことでした。
誰かに大切に思われる気持ちが、その人の心に光をさしたのです。

初女さんは、突然訪れたその人が帰るとき、
電車の中でおなかがすくだろうと思って、おむすびを持たせてあげただけだといいます。
「こうしたらこうなるだろう」とか「こうなってほしい」と思う気持ちはなく、
ただその人のことを想って、おむすびを作ったのです。

その人は電車の中で、おむすびの包みをあけました。
すると、おむすびがふんわりとタオルで包まれています。
「こんなに自分のことを想っていてくれる人がいるのに、自分は死のうとしていたなんて・・・」
と思ったら、もう死んでしまおうという気持ちが消えていたそうです。

私はこの話を聞いて、なんだかわかるなと思いました。
私も食事がぜんぜん通らなくなってしまった日々があります。
おなかが空っぽになっても、心がいっぱいになってしまって、食事がノドを通らないのです。
そんな時、友だちが木々の色づく公園で、
お母さんが私のために作ったというおむすびをさしだしてきたのです。
「これは食べなきゃ悪いな」と思って、パクっと一口食べたのです。
すると不思議なことに、ノド元にあった石コロがころっと落ちるように、
おなかがすきはじめました。おむすびがとてもおいしいのです。

初女さんは、ものが食べられないということは、心の扉を閉じていることだといいます。
そこにすっと何かが入ってくることで、心が開きます。
「おいしい」と思った瞬間、表情とか全部が変わりはじめるそうです。
ひと口、ふた口と食べ進むうちに、心の扉も少しずつ開いていくのです。

魔法のおむすびの秘密は、ここにあったのです。


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この記事へのコメント
愛情のこもった食べ物は 人を癒してくれますよね。。。

こうなってほしい、と思うことなく、ただそのひとを想う。。。
心に沁みる言葉です。(<反省)

私もコトリさんにリンクを貼らせてもらえませんか?
Posted by まほろ at 2005年12月20日 22:54
まほろさん>初女さんがいっていました。
「自分がなにも考えないでしたことほど、心に大きく響くものだと思った」と。
食べるということは、ただおなかを満たすだけではなく、
心にも作用してくるのだと思うようになりました。

リンクもちろんOKです。
私のほうは、ブログリストの変更に少し時間がかかってしまいそうですが、
よろしくお願いいたします。
Posted by コトリ at 2005年12月20日 23:25
魔法のおむすびには、きっと『人と心を結びつける』そんな【お結び】の力があるのかもしれないですね。

見ていてなんだか凄く胸が熱くなり、涙が出そうになりました。
人に思われる。。。
世界にたった一人しかいない自分を思ってくれる人がいる。
大変嬉しい事です。
そこから生まれる感動や笑顔を、また誰かに伝える事が出来ると
心を閉じてしまう人が減るのではないかな、、、と思いました。

コトリさんは本当にいいお話を沢山してくれます。
有難うございます。

Posted by mimi at 2005年12月21日 15:23
コトリさんがお友達のお母さんにつくってもらったおにぎりを召し上がっているところを、私はずっと思っていました。私にもコトリさんの気持ちが伝わってきて。。。私はコトリさんに会えてよかったわ。ほんと。
Posted by 豆乳ラテ at 2005年12月21日 19:00
mimiさん>ほんとに「おむすび」という名前はだれがつけたのか、とてもいろんな意味をふくんだいい名前ですね。
悲しみの中にいると、人はひとりぼっちのような気分になってしまいがちですが、自分を大切に思ってくれる人が必ずいることを思い出せば、また少しずつ元気を取り戻せるような気がします。
mimiさん、こちらこそいつもブログをよんでくれてありがとう!

豆乳ラテさん>秋の公園で、おむすびを食べながら高い空を見上げていました。銀杏並木は黄色くて、高くて、となりには私を思ってくれる友だちがいてくれて「悲しみの中の美しさ」ってああいう時をいうのかなって、今では思います。
豆乳ラテさん、わたしもお会いできてうれしいです。
Posted by コトリ at 2005年12月23日 11:10
 
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